March 11, 2007

ウコン


科目:ショウガ科
英名:Turmeric
サンスクリット名:Haridra
ヒンディー語名:Haldi

ウコン(ターメリック)といえば、健康食品として一躍有名になり、特に沖縄産の春ウコンなどが粉末で売られているのをよく見かける。古くは「卑弥呼の秘薬」などと呼ばれ、日本にも早くから伝わってきていたようである。

鮮やかな黄色をしたショウガのような形のもの、ターメリックは、インド料理には欠かせないスパイスのひとつである。インド人に、色々ある香辛料の中から、これだけは欠かせないというのを3つだけ選べと言うと、このターメリックは、誰に聞いても必ずその中に入る。何がなくても、塩と唐辛子とターメリックさえあれば料理はできる、という人もいるぐらいだ。いわゆる「カレー粉」には必ずターメリックが入っており、カレーの黄色はそのせいである。

日本ではもっぱら食品(香辛料)として知られるこのターメリック、実は、インドでは古来、美肌のための基礎化粧品としても大切にされてきたのである。つまり肌に塗るという使い方。例の本でも、ターメリックは食用植物ではなく、化粧用植物に分類されている。以下引用。

伝統的に、インドでは男性も女性も、沐浴の前にオイルマッサージをする。そして、その後、顔や身体から油分の膜を洗い落とすのに、インドでは、石けんを使うかわりに、ターメリックとレンズ豆の粉末で作ったペーストを使う。ターメリックの根茎はその防腐作用と芳香性で知られ、どちらもクレンジング剤としての優れた性質なのであるが、ターメリックペーストはまたさらに、肌の天然油分を取り去ることなく、汚れを落とし、殺菌もしてくれる。ターメリックの根は、内部があざやかな黄色をしており、粉末にしてクレンジングペーストとして使用すると、肌は黄金色の輝きを帯び、皮膚がただれていれば、同時にその回復もしてくれる。

つまり、ターメリックペーストは「パック&クレンジング」剤として使われるのだ。昔は、結婚式前の新婦には約1週間にわたってこのパックが全身に施され、初夜までに「黄金色に輝く肌」を作っておくという習慣があったらしい。今もそのなごりで、結婚式の参加者が象徴的な意味でターメリックペーストを新婦の顔にちょんと塗るそうだ。

もちろん、そういった美容的価値のみならず、医学的価値も見逃せない。ターメリックの医療的価値としては、その殺菌作用、抗菌作用、抗アレルギー作用が知られており、インド料理に必ずターメリックが使用されるのは、暑い国での細菌の繁殖を防ぐ目的があるらしい。また、ターメリックは胃の粘液や胆汁の分泌を促進するため、消化器の健康を保つためにも摂取される。

塗ってよし、食べてよし、要するに、人間にとってものすごく有用な植物なのだ。その抗アレルギー作用ゆえに、私は秘かにターメリックペーストはアトピーにもいいのではないかと思っている。いつか試す機会があれば... と狙っているのだが、なかなかそれを試す相手がいないのが悩みの種。

カルカッタでお世話になった人の家で、「魚カレー」を作るのを見せてもらった。そのカレーの美味しかったこと!まずターメリック(粉末ではなく、生のままの)・ニンニク・粒マスタードを石の「磨りつぶし器」で磨りつぶしてペースト(生マサラという)にし、マスタードオイル(からし油)でその生マサラを少し炒めてから、魚と水を入れて煮る。あの味は忘れられない。トップの写真は、その生マサラが出来上がったところである。決して衛生的とはいえない台所で、魚もあまり新鮮には見えなかったけど、強力な殺菌作用を持つターメリックが入っているから大丈夫!(ほんとかな?) まあ、べつにお腹はこわさなかった。